そもそも腹式呼吸とは?
腹式呼吸とは、横隔膜を使って行う深い呼吸法です。これは胸式呼吸と対照的であり、リラックス効果や体内の酸素供給を増やすなど多くの利点があります。
胸式呼吸と腹式呼吸の違い
呼吸の方法には「胸式呼吸」と「腹式呼吸」の2種類があります。普段、私たちが日常的に行う浅い呼吸は「胸式呼吸」であり、リラックスして寝ているときなどに行う深い呼吸が「腹式呼吸」です。
「胸式呼吸」は、胸のあたりにある肋間筋を使って行います。大きく息を吸ったり吐いたりするときに肩が上下するのは胸式呼吸の特徴です。一方、「腹式呼吸」は横隔膜という筋肉を使います。息を吸うときに横隔膜が下がり、肺の広がるスペースが増えるため、取り込む空気の量も多くなります。
腹式呼吸のメカニズム
肺自体には筋肉がなく、伸び縮みすることができません。呼吸は、肺の周りにある横隔膜や筋肉、骨の動きによって行われます。横隔膜は、肋骨や肺などがある胸部と大腸や小腸などの臓器がある腹部を仕切るドーム型の筋肉です。この筋肉を動かすことで、一度に多くの空気を取り込むことができます。
胸式呼吸との違い
胸式呼吸は、肋骨を上げ下げすることで胸に息を取り込みます。これに対して、腹式呼吸では横隔膜を動かすことでお腹が前に膨らみます。胸式呼吸では胸(肺)が横に広がるイメージです。
また、優位になる神経も異なります。腹式呼吸を行うと、副交感神経が優位になり、身体がリラックスします。逆に、胸式呼吸では交感神経が優位になり、興奮状態に近づきます。
腹式呼吸のメリット
次に、歌唱力アップのために必要な腹式呼吸のメリット・デメリットについて解説していきます。
1. 呼吸コントロールが容易
腹式呼吸は横隔膜を動かすことで大量の空気を取り込めるため、息を長く保つことが可能です。これにより、長いフレーズを一息で歌えるようになり、歌唱中の呼吸切れを防ぎます。
2. 大きな声を出せる
腹式呼吸では肺活量が増え、より多くの空気を吐き出せるため、力強い声を出すことができます。これにより、パフォーマンス全体が力強く、魅力的になります。
3. 音程が安定
腹式呼吸により、呼吸が安定することで、音程のブレが少なくなります。一定の息を保つことができるため、音程をしっかりと維持しやすくなります。
4. 強弱の表現が容易
呼吸をコントロールすることで、歌の強弱をつけやすくなります。息をコントロールし、細かいニュアンスをつけることができるため、表現力が豊かになります。
5. 全身の使い方が向上
腹式呼吸をすることで体幹が安定し、体全体を使って発声することができます。これにより、声が体全体に響き、より深みのある音を出すことができます。
腹式呼吸のデメリット
1. 無理な意識が逆効果
腹式呼吸を意識しすぎると、体に力が入りすぎてしまうことがあります。特に初心者は、無理に腹式呼吸をしようとして体が硬直し、自然な発声ができなくなることがあります。
注意点と対策
自然な呼吸の習得
まずは、日常生活で自然な腹式呼吸を身につけることが重要です。鼻で息を吸い、口で吐くことを意識することで、深い呼吸を自然に行えるようになります。
胸と肩の動きを抑える
練習中は、胸と肩が動かないように意識しましょう。胸とお腹に手を当て、お腹が膨らむことを確認しながら呼吸を行います。鏡を使って肩が上がっていないかチェックするのも効果的です。
リラックスを心がける
腹式呼吸を行う際にはリラックスが重要です。体に余計な力を入れず、自然な呼吸を心がけることで、腹式呼吸の効果を最大限に引き出せます。
腹式呼吸の練習方法
腹式呼吸がどんなものかわかったので、次はいよいよ実践してみましょう!日々のトレーニングが歌唱力アップの確実な手段です。
腹式呼吸の基本のやり方とコツ
肺の空気を全て吐き切る
まず、現在肺にある空気を完全に吐き出します。
鼻から息を吸い、口から息を吐く
鼻からゆっくりと息を吸い込み、口からゆっくりと吐き出します。
肩を動かさない
呼吸の際、肩を動かさないように意識します。肩が動かないことで、腹部に意識を集中させやすくなります。
お腹や腰周りに空気を取り込むイメージで呼吸する
自分のお腹に手を当て、息を吸うとお腹が膨らむのを確認しましょう。難しい場合は仰向けに寝て練習すると、腹部の動きを感じやすいです。
トレーニング方法
次は、よりしっかりと腹式呼吸を行えるようにするトレーニングです。
トレーニング1: 丹田に空気をためる
丹田を意識する
丹田は、おへそから5㎝ほど下の部位です。ここに空気をためるイメージで息を吸います。
お腹を膨らませる
鼻から息を吸い、お腹の下部を膨らませます。丹田が固くなるのを確認します。
ゆっくり吐く
ゆっくりと口から息を吐きます。吐く時間は吸った時間の倍を目安にします。
最初は1日5回程度、慣れてきたら1日10回~20回に増やしましょう。
トレーニング2: 肺の空気を吐き切った後に息を止める
息を強く吐く
「ハーーーッ」と強く息を吐き、お腹に手を当てて押さえます。限界まで息を吐き、お腹がぺたんこになるのを感じます。
息を止める
息を一瞬止めてから全身の力を抜きます。すると、自然と深い呼吸ができます。
この方法を繰り返し練習し、息を吸う際に丹田に意識を集中させましょう。
トレーニング3: 横隔膜を使って短く息を吐く
ドッグブレス
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」と短く息を吐きます。お腹が凹むのを確認します。
この方法を毎日続けることで、自然に腹式呼吸と腹式発声が身につきます。
まとめ
腹式呼吸は、歌唱力を向上させるための基本であり、長いフレーズを歌えるようになったり、大きな声を出せるようになったりと多くのメリットがあります。ただし、無理に意識しすぎると逆効果になることもあるため、自然に行えるようになることが大切です。正しい練習を重ね、自然な腹式呼吸を身につけることで、より豊かな歌声を手に入れましょう。